自作物語~第二作目「未来からの手紙(前編)」~
第二作目「未来からの手紙(前編)」
これを読んでいる人がいるだろうか?
もし読んでいるなら、どうか最後まで読んで欲しい。
先に言っておくとあなたがこれを読んでいるということは、私がもういないことを意味している。
よくある「これを読んでいる時には私はこの世にはいない」というのと同じさ。
違いがあるとすれば、私は居ないが死んでいるわけではないのだ。
ここで伝えたいのは私がこの世界にいたという事実と私が今いるこの世界の現状についてだ。
結論から言うとこの手紙は2058年から送ったものなんだ。
全く想像がつかないだろう?
私は2058年に多くの体験をした。
それを語りたいのだが、その前に大切なことを伝えよう。
2035年にある事件が起きるんだ。
それは・・・世界大戦さ。
地球の資源が減少して各国が自分たちの生活圏にある石油・石炭・水・食物・・・あらゆる資源を守ろうと輸出の規制をかけたんだ。
すると資源に乏しい国は生き残ることが出来なくなるので、その規制に猛反発したんだ。
輸出を再開しなければ、総攻撃を仕掛けて無理にでも資源を手に入れてやるとね。
暴力的に聞こえるかもしれないけど、それほどに必死だったんだ。
生きる為には資源や物資が何よりも重要だからね。
しかし、ある国がそうした規制に対する報復声明を出した途端・・・、待ってましたと言わんばかりに次々と戦いの準備を始める国が現れ始めた。
皆きっかけを待っていたんだ。
そうしていよいよ大戦がかと思った時に、各国代表が集まって会議をすることになった。
誰だって戦争はしたくないからね。
しかし、各国の代表は自国の利益を守ることしか考えておらず、話が全く先に進まなかった。
挙句の果てには口論からの乱闘になり、会議を主催した議長とその妻が会議の乱闘騒ぎの中で死亡してしまった。
各国代表がそのことに気づいて、一度落ち着いたと思ったら今度は犯人は誰だと、また争い始めた。
その時銃声が鳴り響いた。
全員が驚き銃声の方向に目を向けると、そこには小さな子供が銃を持って立っていた。
そして一言「私の両親は誰かに殺されたんじゃない。平和を求めて立ち上がり亡くなったんだ」。
そういうと子供は更に一言「私も平和な日々を求めてこの場所に来ました」と、言うやいなや子供は銃を自らに向かって放ち、その短い一生を終えた。
この一連の模様は世界中に中継されていた。
目の前で尊い命が失われてようやく自分たちの愚かさに気づいた世界の人々は団結して、資源不足に立ち向かうようになっていった。
そして2045年、石油・石炭等の資源は完全にこの世界から無くなり、代わりに新しいエネルギーを人類は手にすることが出来たんだ。
これによって各国のエネルギー問題に端を発した様々な問題が解決して、再び平和で落ち着いた世界になった。
しかし、この時誰も気づいていなかったんだ。
私たちの作ったエネルギーはこれまでの資源の代替にはなり、現在の生活水準を維持することはできるけれど、このエネルギーを元手に更なる文明の進化・発展ができなくなってしまった。
このエネルギーは生活インフラを支えるのに精いっぱいでそれ以上のことはできなかった。
無理をすればまたエネルギー問題が発生するからね。
ここまで読んできてちょっと混乱してきてしまったかな?
もう少しで終わるから、最後まで付き合って欲しい。
さて、人類の文明の発展がこれで限界だと判明してから数か月後、多くの人々が自ら命を絶った。
これ以上進んだ文明を見ることが出来ないと悟った人たちは、生きる気力を失ってしまったらしい。
2058年の今、生気を宿した人はほぼいない。
人類は種としての限界に辿り着いてしまったのさ・・・・。
信じられないだろう?
私も信じられないが・・・これが事実なんだ・・・。
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