自作物語~第二作目「未来からの手紙(中編)」~
第二作目「未来からの手紙(中編)」
どうしてこうなったと思う?
私達人間はね、この先がないと思うと・・・未来が今より良くなってないと思うと絶望してしまうんだ。
進歩がなくそのまま変わらないというのは停滞していると感じるんだ。
貴方にも覚えがあると思うけど、例えば、好きなスポーツのトレーニングを積んでいるけど、一向に自分が進歩をしていないと感じている時は辛いだろう?それは自分の費やしている時間が無駄なんじゃないかと感じるからだ。それだけじゃないけど、兎に角進歩がないというのは非常に辛い。
それでも私たちも何とかこの現状を打破しようと色んな手を講じたんだ。
けれど、無理だった。
結果として、進歩を望む人たちは色んな研究や実験を行って、新たな代替エネルギーを作れないか画策したけど、できないことを証明しただけだった。
文明を進歩させて人類の生活をよりよくすることが自分たちの生きる意味になっていたんだろうね。
・・・すまない、悲しい話になってしまったね。
そんな絶望の状態を何とかしようと私は考えた。
ある時良いことを思いついたんだ。
それがこの手紙だよ。
過去に手紙を届けること。
一応無生物且つ20g以下のものであれば、過去のおおよその年と場所を指定して送ることが出来る。
本当はもっと高度な装置を作る予定だったみたいだけど、研究に回せる資材もエネルギーもなくてね。頓挫してしまったみたいだ。
なので、この手紙を読んでいるあなたがいつの人かはわからない。
一つ言えるのは私は直接会えないがこれを読んでいるあなたにとても感謝をしているということ。
ありがとう。
さて、そろそろ最初に言った手紙を読んでいる頃には私がいないという言葉の意味する所を伝えようと思う。
結論私は・・・いや私達は今とは別の世界に行くと考えている。
何を言っているか理解しにくいと思う。
簡単に説明をするとあなたがこの手紙を読んだことにより、嘘か誠か2,058年という時代のことを知ることが出来た。
そうすると何が起こるか・・・・。
あなたの行動が無意識のうちに未来を想定して、行動を変化させるだろう。
勿論これは未来にいる私たちの主観から見ての行動の変化だ。
貴方自身は今まさにこの瞬間を生きているだろうからわからなくて当然だ。
だが、その行動の変容がきっかけとなり、私がいる2058年のこの世界はあなたの行動によって変わる。
つまりこの世界の消失を意味するんだ。
難しいかな?
例えば、見本を見ながらホールケーキを作っているとしよう。私はフルーツが大好きなので、ケーキの中にフルーツを入れたい。なので、作る前にフルーツを用意してケーキを作った。完成したケーキは当然見本とは違うケーキになった。
これは一人で行うとただ見本とは違うケーキを作ったことになるけれど、誰かその事実を知る別の誰かがそこに介入したらどうだろう?
例えば、未来のあなたが「やっぱりフルーツはやめてチョコケーキにしよう」と提案する。
あなたはそれを承諾しチョコケーキを作る。
そうすると、フルーツケーキを作った未来とチョコケーキを作った今があるだろう?
チョコケーキを作った訳だからフルーツケーキを作ったという事実はどこにもなくなってしまう。
するとフルーツケーキを作ったあなたはどうなってしまうのだろう?
私の考えではその世界はもう存在せず、全く新しい世界に変わっていると思うんだ。
あなたはこう思っているだろう。
良くあるタイムスリップものを踏襲したチープな物語を綴った手紙だと。
そう思うのも無理はない。
けれど、不思議だとは思わないかい?
あなたが手紙を読んで行動を変化させたら未来が変化する。
あなたの主観で言えば、今この瞬間の行動を選択しているにすぎないのにね。
最初に伝えておくとあなたの行動の結果2058年の私がいるこの世界が消えるのだが、その行動というのは私の手紙を読むことなんだ。
あなたは2058年という未来がどういう世界なのか知っている。
恐ろしいだろうし、不安な気持ちもあるだろう。
でも大切なのはあなたはあなたらしく今という時を懸命に生きていくことだよ。
どんな未来が待っていても、今を懸命に生きていれば後悔することなく過ごせるはずだから。
私も自分のやりたいと思ったことは何でもやってきたから割と後悔していることは少ない。
この手紙だって、もしかしたらの可能性に賭けて送ったからね。
・・・ここまで長らく読んでくれてありがとう。
私の世界がどのようになるのかは本音を言うと全くわからない。
・・・そうだ、悔いが一つだけあった。
それはこの手紙を読んでくれたあなたに未来がどうなったのかを伝えることが出来ないことだ。
それだけが・・・残念です。
それでは・・・さようなら。お元気で。
後編に続く・・・・
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